【書籍】『密室殺人ゲーム王手飛車取り』読破
「歌野晶午」著の本格推理小説です。
本のタイトル、つまりネーミングセンスで損している印象を受けます。(※1)
「歌野晶午」氏を知らなかったら、本作のタイトルでは読む気にならなかったでしょう。
※1 『正月十一日、鏡殺し』もとても良い本格推理小説だったのですが・・・やはり、作品タイトルが。
「歌野晶午」氏の最初の印象ですが、デビュー作(?)『長い家の殺人』を読んだ時は正直、がっかりしました。
「法月綸太郎」氏の『雪密室』もですが、本の宣伝が大袈裟すぎたのでしょうか。
なんだこんな「トリック」だったのかと・・・・・・。読む前の期待が大きかった分、反動が大きかったのだと思います。
その後、推理小説とはあまり言えない『ROMMY』を読んだ後、「歌野晶午」氏の作品には全く手を付けなかった数年間があったと思います。(一時期、外国の推理小説しか読まない時期もあったのでそれと重なったかも。)
久しぶりに「歌野晶午」氏の作品とはあまり意識せずに読んだ作品『さらわれたい女』が面白くて、以降、図書館で未読作品を見かけたら読むようになりました。
その後に読んだ作品はどれも期待を裏切らない作品ばかりでした。
前述『正月十一日、鏡殺し』、『ブードゥー・チャイルド』、『安達ヶ原の鬼密室』と・・・。
他の著者では【密室】とタイトルにつく作品(本)には、ほとんど期待を裏切られてばかりでした。
「歌野晶午」氏の作品では本作を含め、特に『安達ヶ原の鬼密室』では挿絵の「4コマ(?)漫画」があからさまに【密室】のヒントが出されていたのに、解けずに解答編にて「悔しい」思いをした記憶があります。(それでこそ、面白い推理小説なのですが・・・。)
「歌野晶午」氏の【密室】タイトル(少ないですが)は現在のところ、私の期待を裏切っていません。(【密室】トリックに限定せず、他のトリックでも面白いものが揃っています。)
本作品の内容を簡単に説明すると、インターネット上で「映像」と「音声」でチャットする5人の人物達による【推理ゲーム】の様子が描かれています。
5人の「ニックネーム」は<頭狂人>・<044APD>・<aXe>(アクス)・<ザンギャ君>・<伴道全教授>・・・とても「まとも」ではありません。
「映像」のあるチャットですが、各自「変装」(マスク,鬘,パーティーグッズの眼鏡etc)したり、代わりに「飼っている亀」を写したりして「正体がばれない」ようにしています。
5人が実施している【推理ゲーム】自体が「ニックネーム」同様に「まとも」でないからです。
5人が解く事件は「現実の事件」、犯人は・・・「問題の出題者」です。
「問題の出題者」が事件を起こし、残り4人が出題者から提示される資料およびマスコミ報道などを通して、事件の謎を解き明かすゲームなのです。
犯人は前述のように「既に分かっている」ため、【推理ゲーム】の問題/謎の焦点は、
■被害者の「ミッシングリンク」(隠されたつながり)探し(連続殺人)
■衆人環視に近い状況での切断胴体の運び出し(遺体運搬)
■日本で事件発生時、犯人は通常事件発生時間に戻れない海外に・・・。(アリバイ崩し)
■密室(説明は不要かと・・・)
「誰が」ではなく、「どうして」「どうやって」⇒犯行方法などの解明です。
5人各自の起こした事件の中には解答編を読んだ後、「これを自力で解くのは無理だ・・・。」と思う知識が必要な「謎」もありましたが、多くは「してやられた・・・。」(★)と感じました。
全体的な結末は「いまいち」、またちょっと「残虐趣味」「人間のダークサイド」的な面が描かれており、読み終わった後の後味は悪いのですが・・・・・・。
謎解き=推理小説としては、期待を裏切らない「トリック」(仕掛け)だったと感じました。
あまり「歌野晶午」氏の他作品に登場する人物について覚えていないので確信して言うわけではないのですが、「歌野晶午」氏の作品にはシリーズとして登場する「名探偵」に該当する人物がいなかったと思います。
「名探偵」が好きな私としては、魅力的な「名探偵」を出して、シリーズ化して欲しいのですが・・・。
本作の中でも確か一部皮肉っていましたが、連続殺人を防げず、全て事件が終了してから神のごとく常人離れした推理で事件を解決する「名探偵」が嫌いなのでしょうか。
ただ、「歌野晶午」氏の作品はフェアプレイに溢れており、何か特別な知識がないと解けないといった「トリック」は少ないです。
★に記述したように解けなくて「してやられた・・・。」と感じる「トリック」が多い、「あとちょっとで・・・正解に到達したかも。」と感じることも・・・。
なので、あまり<常人離れした「名探偵」を出さない>のは「適切」とも思います。
(記:スッタコ小僧)
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