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2007年7月11日 (水)

【書籍】『帝都衛星軌道』読破

 「島田荘司」著のタイトルを含めて、中編2作品を収録した推理小説です。
私個人的には残念なのですが、「御手洗潔」および「吉敷竹史」シリーズではありません。

 中編2作品が以下の順序で掲載されています。

1)帝都衛星軌道(前編)
2)ジャングルの虫たち
3)帝都衛星軌道(後編)

 特に作品間に関連はありません。ただ、舞台(場所)の設定が同じかな。

 初期の作品と比較すると最近の「島田荘司」氏の作品は、冤罪や社会問題を扱っています。
 本作品も根底にその流れが溢れています。
 私は、初期の単純(純粋)に推理を楽しめる作品が好きなのですが・・・・・・。

 「島田荘司」氏の作品に幾分共通していますが、いろいろな知識を習得できます。
 今回、本のタイトルにもなっている『帝都衛星軌道』では東京の地下鉄についての(豆?)知識が習得できます。

 それでは『帝都衛星軌道』について、記述します。

 扱っている事件は「誘拐事件」です。
 舞台は1999年、警察の科学捜査も発達しています。
 犯人の要求金額は異様に少なく「15万円」です。 「父親」ではなく、誘拐した子供の「母親」に身代金の受け渡しを要求してきます。

 指示された「新宿駅」に行くとロッカー経由で「トランシーバー」を渡し、通話により位置を特定可能な携帯電話を捨てさせます。
 ただし、上記「トランシーバー」は普及品でせいぜい通話距離は【4~5km】程度という代物でした。
 尾行していた刑事達は、あまりハイテク機器に詳しくない犯人と甘く見るのですが・・・・・・。

 犯人は、「母親」を「山手線」外回りに乗るように指示します。
 刑事達は「新宿駅」で通話可能だったことから、通話距離限界に近い「池袋駅」で下車をさせる予定、つまり勝負どころだと構えます。
 ところが「池袋駅」で下車要求は発生せず、(新宿より)【4~5km】以上離れているのに通話が成立しています。
 さすがに刑事も推理を働かせ、乗っている電車および前後を走っている電車内を調査させるのですが・・・・・・。

 -犯人が見つかりません!-

 その謎が本作のタイトルに絡んで著者が伝えたかった事とは別に推理小説とするために扱っている(言いすぎ?)「(メイン)トリック」です。
 
 正直に言います。「御手洗潔」「吉敷竹史」シリーズでなくて良かったです。
 ちょっと「拍子抜け」した(「トリック」の)「種明かし」でした。
 私は、刑事の台詞にてミスリードされてしまいました。初めに考えついたことについて、もっと推理を進めていれば解答に辿りついたのに・・・・・・。(著者の狙い通りの罠に嵌ってしまったのかな。)

~~~
 実を言うと「島田荘司」氏の作品は久しぶりに読みました。
 以前は、「御手洗潔」シリーズなどを読み返していましたが、

○「吉敷竹史」シリーズ『涙流れるままに 上巻』にて、あまりに妻「加納道子」の暗い/壮絶な過去の描写に耐えられず、途中で挫折・・・。(読了した方の感想がとても良いので、いずれ再チャレンジするつもりです。)

○「御手洗潔」シリーズは『ネジ式ザゼツキー』を読んだのが最後になっています。(『眩暈』と同系統の流れ/謎に感じられ、あまり新鮮味を感じなかった作品です。)

 「吉敷竹史」シリーズ『涙流れるままに』の再チャレンジ前に、シリーズを最初から読み直してみるつもりです。

 当該シリーズはあまり順序を意識することなく、「御手洗潔」シリーズのちょっとした合間のつもりで読み進めていました。

 一刑事の作品として、シリーズになるとは思ってもいませんでした。
 (幾分現実的な謎の犯罪事件を扱う作品には)「同じ刑事を登場させているな。」とちょっと感じていただけで、「加納道子」との壮大な物語に繋がっていくとは思ってもみませんでした。

 「島田荘司」氏の作品についてまとめた単行本を以前に読みました。
 一応、作品タイトルと出版年を控えておりましたので、最近のものは含まれませんが参考までに記載しておきます。

表.「御手洗潔」シリーズ
作品名 出版年
占星術殺人事件 1981
斜め屋敷の犯罪 1982
御手洗潔の挨拶 1987
異邦の騎士 1988
御手洗潔のダンス 1990
暗闇坂の人喰い木 1990
水晶のピラミッド 1991
眩暈 1992
アトポス 1993
龍臥亭事件 1996
御手洗潔のメロディ 1998
Pの密室 1999
最後のディナー 1999
御手洗パロディ・サイト事件 2000

 定番「アガサ・クリスティー」の「ポアロ」シリーズから脱却させてくれた(?)のが『占星術殺人事件』です。
 次作『斜め屋敷の犯罪』と合わせて、「島田荘司」氏の作品から抜け出せなくなった要因です。

==========

表.「吉敷竹史」シリーズ
作品名 出版年
寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁 1984
出雲伝説7/8の殺人 1984
北の夕鶴2/3の殺人 1985
確率2/2の死 1985
Yの構図 1986
灰の迷宮 1987
夜は千の鈴を鳴らす 1988
奇想、天を動かす 1989
羽衣伝説の記憶 1990
ら抜き言葉殺人事件 1991
飛鳥のガラスの靴 1991
涙流れるままに 1999

 『奇想、天を動かす』はタイトル通り、その謎に吃驚しました。
 こんな謎に本当に解答(「トリック」)があるのかと、最後までドキドキさせてくれました。

==========

表.その他
作品名 出版年
死者が飲む水 1983
嘘でもいいから殺人事件 1984
漱石と倫敦ミイラ殺人事件 1984
高山殺人行1/2の女 1985
殺人ダイアルを捜せ 1985
消える「水晶特急」 1985
サテンのマーメイド 1985
夏、19歳の肖像 1985
火刑都市 1986
消える上海レディ 1986
網走発遙かなり 1987
展望塔の殺人 1987
ひらけ!勝鬨橋 1987
毒を売る女 1988
切り裂きジャック・百年の孤独 1988
嘘でもいいから誘拐事件 1988
幽体離脱殺人事件 1989
見えない女 1989
踊る手なが猿 1990
都市のトパーズ 1990
天国からの銃弾 1992
天に昇った男 1994

 『毒を売る女』と『見えない女』が特に印象に残っています。

~~~

(記:スッタコ小僧)

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