【書籍】『盲目の理髪師』読破
「ディクスン・カー」著の「フェル博士」シリーズ長編第4作目です。 (本書あとがきより第4作目と判明。)
別名義「カーター・ディクスン」で「ヘンリ・メリヴェール卿」(H・M卿)シリーズがあります。
私は、怪奇・幻想・不可思議がどちらかというと溢れている後者の「H・M卿」シリーズの作品が好きです。
残念ながら本書のあとがきには、著者の作品年表などは記載されていないので、辛うじて
■「フェル博士」シリーズ
第1作目『魔女の隠れ家』
第2作目『帽子収集狂事件』
第3作目『剣の八』
第4作目(本書)
の第4作目までの順序が分かるのみです。
まあ、今まで両シリーズをいくつか読んでいますが、特に読む順序が大きく影響することはなかったので、困ることはありません。(主人公以外に目立ってシリーズ全体を通して登場したり、過去の作品に登場し、後の作品に大きく影響する人物は存在していなかったように記憶しています。)
本作の説明に入りますが、意味ありげなタイトル『盲目の理髪師』はあまり内容に関係ありません。
現場に落ちていた凶器と思われる剃刀に「盲目の理髪師」(彫刻)が描かれていただけです。
本作で扱われている事件はというと、一言でいうと【しっちゃかめっちゃか】です。
つまり、
「事件が起こっているのか?」
「起こっているとしてどんな事件が起きているのか?」
「本当に事件なのか?」
が最後の謎解きまで分からない状態です。
そこが本作の醍醐味(作者の狙い)なのかと思いますが・・・・・・。
舞台は、船上、つまり密室で海以外は逃げ場がありません。
探偵役の「フェル博士」は船には乗船しておらず、事件後いち早く上陸した知人の推理小説家から船上で発生した数々の出来事(事件)のあらましを聞き、推理する安楽椅子探偵を演じています。
船上では様々な事件が発生しました。
1)政治的大スキャンダルとなるフィルムの盗難。
2)エメラルドの盗難、だだし戻ってくる。
3)死体、だだし消える。
4)上記3)の死体が発生したのに
乗客/乗組員で行方不明者なし。
などなど。
前述の通り【しっちゃかめっちゃか】で、一体「何が」「何の目的で」「どのように」発生しているのかと読者を【五里霧中】の状態に陥れます。
上記のドタバタをしっかり、理詰めで最後の最後に「フェル博士」がきちんと収束[解決]してくれます。
正直、本著者の作品はお得意の「トリック」(密室など)を期待して読んでいただけにちょっと裏切られた感じです。
ただ、前述の【五里霧中】状態を、解決編で論理的に全てを明らかにしてくれた点は素晴らしかったです。
~~~
本著者作品全体を通しての感想です。
たぶん今まで、本著者の作品を読まずに
・推理物の「コミック」(アニメ化含む)
・本著者以降の色々な著者の推理小説
(日本および外国作家)
に多く親しんできた方については、本著者が扱っている「トリック」に類似したものにきっと触れてしまっています。
まるっきり模倣していると言われても仕方がない作品もありました。(作者が知らなかったのかも知れませんが。)
本著者がメイン「トリック」で使用しているものが、サブ(?)「トリック」扱い、つまり犯人が使用した「トリック」の内、序盤にて簡単に探偵に見破られるものの一つとして扱われている場合もあったように記憶しています。
私も本著者の作品は「エラリー・クィーン」や「アガサ・クリスティー」などと比較すると図書館においてあることが少ないので、有名な作品(※1)以外はかなり多くの推理小説に触れてから読んでしまっています。
また、有名な作品になるほどその「トリック」の【種明かし】がいろいろな所で流出しており、該当作品を読む前に「トリック」を知ってしまっていることもありました。
上記より、私も残念ながら本著者の作品を読んでその「トリック」に衝撃・感銘を受けることが少ない結果となっています。
類似「トリック」作品を読んだことにより、本著者の作品を読んでいる最中になんとなく「トリック」が分かってしまった(自分で解いたのではなく記憶で・・・)事が多々ありました。
最初に本著者の作品を読んでいたら、もっと感想は違ったものになっていたものと思います。
残念でなりません・・・・・・。
※1 『ユダの窓』『三つの棺』『帽子収集狂事件』『赤後家の殺人』など
~~~
(記:スッタコ小僧)
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